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職務定義の設計プロセス ~事例から学ぶ、プロダクトマネージャーのキャリアラダー設計⑥~

本記事は「事例から学ぶ、プロダクトマネージャーのキャリアラダー」第6回の記事です。興味を持たれた方はぜひ他の記事もご参照ください。

第1回:キャリアラダーの定義と参考事例の紹介
第2回:役職と給与グレードを整理する
第3回:職務定義を作成する
第4回: 「期待される役割(Responsibility)」を定義する
第5回: 「求められる人物像(Requirement)」を定義する
第6回: 職務定義の設計プロセス(本記事)

はじめに

これまでの記事で、優れた職務定義に必要な構成要素と具体的な内容を詳しく説明してきました。
募集要項などでまとめていたものと比較して詳細度や構造化の観点で解像度が非常に上がっていることを感じていただけたかと思います。
では、どのようにしてこのレベルまで、ブラッシュアップしていけばいいでしょうか?
ここでは職務定義設計のプロセスを説明します。

職務定義設計用のワークシートを用意する

職務定義を設計するときは、職務定義の構成要素で説明したような役職ごとの職務定義シートを埋めていくのではなく、以下のように職務定義の構成要素を縦軸に、役職を横軸においたスプレッドシートを用意して、項目ごとに役職における違いを意識しながら作成していくことをおすすめします。

職務定義設計用のワークシートのサンプル

職務定義設計のプロセスの4ステップ

職務定義設計のプロセスは以下の4ステップから構成されます。

  1. 業務内容を具体的な行動指針レベルまで具体化する
  2. プロダクトマネージャーのコアバリューを定義する
  3. はたすべき役割(Responsibility)の実現に求められる求められる人物像(Requirement)を定義する
  4. ヌケモレがないか構成要素が密に関連づいているかチェックする

STEP 1. 業務内容を具体的な行動指針レベルまで具体化する

優れた職務定義を作成する取っ掛かりとして、まずは、すでに用意されている業務内容を具体的な行動指針レベルまで具体化してみましょう。

業務内容として定義されている「何をするか(What)」に6W3H(Why, What, Who, When, Where, Whom, How, How much, How often)を付加することで、日常業務に直接結びつくような解像度の高い行動指針に仕上げていきましょう。

また、業務内容として定義されている「何をするか(What)」が抽象的な場合は、複数の項目に分割し、日常業務として実施可能な単位まで落とし込みましょう。

6W3Hを用いた具体化の観点と事例を紹介します。

6W3Hを用いた業務内容の具体化例

具体的な行動指針のイメージは掴めてきたでしょうか?
業務内容を具体的な行動指針に深めていく過程で、追加したい項目が浮かび上がってきたら追加していきましょう。
追加するときは6W3Hに加えて以下の観点を意識しながら記述すると良いでしょう。

日常の業務と結びつくように記述する

追加したい項目はどのような日常業務と結びつくでしょうか?
逆に、重要な日常業務の中で、具体的な行動指針として記述されていないものは無いでしょうか?
具体的な日常業務と結びつかない行動指針は思い切って削除してしまうことも検討してみてください。

各役職のスコープを意識する

プロダクトマネージャーは責任範囲が広く不明瞭であることが多いため、ともすれば、過大な期待を寄せてしまい、行動指針が過剰に膨れ上がってしまうことも考えられます。
そういった事態を防ぐために、各役職のスコープを整理したうえで、どの役職に追加するのが適切か判断しましょう。
GitLabでは大きく以下のようにスコープが整理されています。

GitLabプロダクトマネージャー職の役職ごとのスコープ

楔を打ち込む

従業員から役員まで忘れてはならない重要な企業文化・価値観がある場合は、あえて上位の役職の行動指針に追加してみるのを検討してみてください。
例えば、GitLabのCPOのResponsibilityには「最小限の実行可能な変更(MVC)を繰り返し行う」が記載されています。
GitLabでは企業文化や製品理念などいたるところで「反復」の重要性を説明しています。
役職が上に行けば行くほど、複数年のロードマップやプロダクトのビジョンの策定といった非常に視座の高い業務を行う必要があります。
そのような業務に慣れてしまうと、大きな変更や壮大なプロダクトロードマップを描いてしまい、「反復」の精神を忘れてしまう危険性があります。
そこで、楔を打ち込む意味を込めて、CPOのResponsibilityには「最小限の実行可能な変更(MVC)を繰り返し行う」と記載されているものと思います。

STEP 2. プロダクトマネージャーのコアバリューを定義する

業務内容から具体的な行動指針への具体化が一通り完了したら、具体的な行動指針全体から、すべてのプロダクトマネージャー職に通底するコアバリューはなにか考えてみましょう。
「この行動指針が必要な目的はなにか?」「この行動指針はどういった価値観に根ざして生まれているのか?」といった問いをもってそれぞれの具体的な行動指針を3〜5つ程度にグループ分けをして、それぞれのグループに名前をつけ、コアバリューを定義しましょう。
コアバリューを定義するときは「顧客理解」や「プロダクト戦略の立案」といった一般的な用語に終始せず、企業文化を含有したキャッチーで独自の表現を検討してみてください。
コアバリューは今後、プロダクトマネージャーを評価するときやプロダクトマネージャーが作成する企画を評価するときに指標として用いられることとなります。
そのため、そのコアバリューを聞いたときワクワクしたり、「ウチの会社っぽいよね」と思えるような愛される言葉を探し出してください。

STEP 3. はたすべき役割(Responsibility)の実現に求められる求められる人物像(Requirement)を定義する

はたすべき役割(Responsibility)が整理できたら次に、求められる人物像(Requirement)を定義していきましょう。
前出の通り、求められる人物像(Requirement)には「経験」、「知識」、「マインドセット」、「スキル」の4つの観点があります。
はたすべき役割(Responsibility)を実現するためには4つの観点でそれぞれどういったものが求められるでしょうか?
当該役職で新しく採用するときに、職務経歴書に記載されていてほしい経験はなにか、採用面接の際に確認したいマインドセットや知識・スキルはどういったものかという観点から洗い出してみましょう。

STEP 4. ヌケモレがないか構成要素が密に関連づいているかチェックする

最後に、完成した職務定義にヌケモレが無いか、構成要素が密に関連づいているかチェックしましょう。
以下の2つの観点からチェックしましょう。

  • プロダクトマネージャーの網羅的なスキルリストと照らし合わせて、行動指針にヌケモレが無いか
  • ヨコ(構成要素間)にタテ(役職間)に相互に照らし合わせて、密に関連しているか

プロダクトマネージャーの網羅的なスキルリストと照らし合わせて、行動指針にヌケモレが無いか

職務定義のヌケモレをチェックする観点として、網羅的なスキルリストと照らし合わせてレビューすることは効果的です。

昨今のプロダクトマネージャーへの注目を受けて、プロダクトマネージャーの網羅的なスキルリストを定義した資料は様々あります。

中でも筆者は以下の資料を信頼性・網羅性の観点からおすすめします。
それぞれ比較してみて、適したものを参照してみてください。

  • プロダクトマネジメントのすべて
  • 日本のプロダクトマネジメント業界を牽引する3名によって、プロダクトマネジメントの業務内容が包括的かつ詳細に説明されています。スキルリストは本書を読み解いて、自身で作る必要がありますが、他2つと比べて内容が非常に具体的ですので、必ず何らかの新たな観点を発見できると思います。
  • プロダクトマネジメントトライアングル
  • プロダクトマネジメント業務を、「開発」、「顧客」、「ビジネス」の観点から整理したものです。初公開は2014年と少し古いこともあり、最近では言及される機会は少なくなってきていますが、短いワードで網羅的に整理されているので、レビューの観点としてはまだまだ有用です。
  • DX推進スキル標準(ビジネスアーキテクト)
  • IPA(情報処理推進機構)がまとめた、企業のDXを実現するにあたり、DXを推進する専門人材の役割や習得すべきスキルをまとめたものです。紹介されている専門人材の一つ、「ビジネスアーキテクト」はプロダクトマネージャーとの類似性が非常に高いことから、参考になると思います。

ヨコ(構成要素間)にタテ(役職間)に相互に照らし合わせて、密に関連しているか

優れた職務定義はヨコ(構成要素間)にタテ(役職間)に密に関連づいています。
最後のチェック項目として、すべての役職の職務定義を見合わせて、効果的に関連づいているかチェックしてみましょう。

職務定義の構成要素間の関係性

優れた職務定義は一度で満足のいく完成度まで作り上げることは困難です。
企業文化、製品理念、業務プロセスなど企業活動の根幹深くと結びついているため、それらの深化も同時に必要になってくるからです。
そこで、職務定義設計のプロセスを人事評価のタイミングで見直すなど、定期的な業務として組み込み徐々に理想的な職務定義に作り上げていくことが大切です。


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