事例から学ぶ、企業を成長に導くプロダクトマネージャーのキャリアラダー設計

はじめに
キャリアラダーの設計は多くの経営者と従業員にとって気の重い課題です。
優れたキャリアラダーを設計するには大きなリソースが必要です。
しかし、売上や利益といった目に見える成果として効果を実感することが難しく、経営者は一般的で抽象的な記述にとどめてしまうことがしばしばあります。
キャリアラダーが一般的で抽象的な定義のまま運用が続くと、従業員は人事評価の納得感や従業員同士での評価の不公平感に不満を抱きます。
スキルアップや昇進の道筋として参照しようにも、何をどのように頑張って結果を出せばいいのかイメージがつきづらいです。
特にプロダクトマネージャーは職種の特性上、業務や責任範囲のとらえどころが難しく、キャリアラダーの曖昧さが顕著です。
そこで、GitLabを中心としたプロダクトマネージャーの優れたキャリアラダーの設計事例を基に、キャリアラダーの詳細な記述内容と設計プロセスを紹介します。
プロダクトマネージャー以外の職種でも参考になると思います。
キャリアラダーの設計に頭を悩ませている皆さんにとって、効率的で効果的なキャリアラダー設計の一助になればと思います。
本記事におけるキャリアラダーの定義
本記事ではキャリアラダーを1つの職種における役職のグレードと役職ごとの職務定義をまとめたものとして定義しています。
それぞれの用語は以下の意味で用いています。
- 役職 : PdM, グループPdM, VPoP, CPOなど、プロダクトマネージャーを職種とする肩書
- 役職のグレード : 各役職が社内グレードのどこに位置するか示したもの。主に全社的に定義されている給与グレードを念頭においています。
- 役職ごとの職務定義 : 各役職が社内においてどういう人物・働きを期待するか記述したもの。募集要項や人事評価で定義されていることが多いかと思います。
役職と役職ごとのグレードについては多くの企業ですでにしっかりと定義・運用されていることが多いと思いますので、設計の概要とポイントのみ説明します。
本記事では、役職ごとの職務定義について「どういった内容を記述するべきか」、「どのようなプロセスで設計するべきか」を詳しく説明していこうと思います。
本記事の構成
広範囲なトピックを取り扱うため、文章量が膨大になってしまいました。
そこで、以下のようにトピックごとに記事を分割しています。
第1回:キャリアラダーの定義と参考事例の紹介(本記事)
第2回:役職と給与グレードを整理する
第3回:職務定義を作成する
第4回: 「期待される役割(Responsibility)」を定義する
第5回: 「求められる人物像(Requirement)」を定義する
第6回: 職務定義の設計プロセス
具体的なキャリアラダー設計の説明は次回以降でしますので、ここではキャリアラダーの定義と本記事で参照する参考事例の紹介をしたいと思います。
興味のありそうなところだけでも読んでもらえると幸いです。
本記事で紹介する優れたキャリアラダー設計の事例
本記事を執筆するにあたって、参考にした企業と出典を紹介します。
どの企業のキャリアラダーも非常に学びの多いのですが、本記事ではすべてを詳細に紹介することはできませんでした。
ですので、より深く知りたい方はぜひリンク先もご確認ください。
事例① GitLab
GitLabはGitのリポジトリ管理を中心に、DevSecOpsプラットフォームを提供しています。
「透明性」を企業のコアバリューの一つとして掲げており、The GitLab Handbookにてプロダクト戦略や職務定義といった社内情報の多くを外部に公開しています。
包括的かつ詳細に情報を得ることができるため、本記事ではGitLabを中心に事例の紹介をします。
- プロダクトマネージャー(個人貢献者)の職務定義
- プロダクトマネージャー(マネジメント)の職務定義
- CPOの職務定義
- プロダクトマネージャーのCDF(Career Development Framework)
事例② Intercom
Intercomは、25,000社以上が利用しているアメリカ発のCRMプラットフォームです。
2本のブログ記事を通じて、キャリアラダー設計の重要性とIntercomのキャリアラダーを公開しています。
- The Importance Of A Clear Career Path For Product Managers
- Intercom’s Jane Honey on perfecting career paths for product management - The Intercom Blog
後者の記事にプロダクトマネージャーのキャリアラダーの全文を個人貢献者とマネジメントそれぞれPDFファイルで公開しています。
事例③ Optimizely
Optimizelyは、ABテストを簡単に実施できるサイト最適化ツールを提供しています。
以下の記事にて、キャリアラダーの全文と役職ごとの解説を公開しています。
事例④ メルカリ
メルカリでは組織の拡大に伴い、2021年に人事評価制度を大幅に改定しました。
新人事評価制度ではグレードを基準に、期待成果とバリュー発揮行動の2つの観点から評価するようになりました。
バリュー発揮行動はメルカリのコアバリューと紐づいており、どのような形で、企業のバリューが評価制度に落とし込まれるかイメージしやすいと思います。
またメルカリのエンジニアリングチームはバリュー発揮行動をグレード別に定義した資料を公開しています。職種は異なりますが、グレードごとの責任範囲の広がりをイメージできるかと思います。