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1on1をただの雑談で終わらせない。OKRシステムのもう一つの柱「CFR」について

前回の記事「Measure What Matters」に学ぶOKRシステムの実践マニュアルでは、「Measure What Matters」の知見をもとに、OKRの設定から振り返りまでの具体的プロセスをご紹介しました。短いスキマ時間でも実践できる、手法のエッセンスを凝縮しています。

しかし、OKRだけでは全体のパフォーマンス向上は望めません。
OKRシステムの最終目標は、**「個人の強みと責任感を発揮すると同時に、全員のビジョンや努力の方向性を一致させ、チームワークを醸成し、個人の目標と全体の幸福を調和させることで、とんでもなく野心的な目標を達成すること」**です。(詳しくはMeasure What Mattersを読んだのにOKRがうまく行っていないときに読む記事を参照してください)
その最終目標達成に必要なもうひとつの要、CFR(Conversation・Feedback・Recognition)は、現場の生の対話とフィードバックによってパフォーマンスを底上げする仕組みです。
この記事では、実践の現場で直面する課題との向き合い方も交えながら、CFRの本質と活用法に迫ります。

以下のような悩みを抱えている方にぜひ読んでいただければと思います。

・四半期ごとの振り返りだけで、OKRがただの形式になりがち
・ボトムアップのOKRも、結局は上層部の一方的な指示に変わってしまう
・1on1が単なる近況報告や不満の共有のみで終始してしまう

CFRとはOKRを実現するための1on1フレームワーク

CFRは対話(Conversation)、フィードバック(Feedback)、承認(Recognition)の頭文字であり、この3つのトピックを中心に1on1を実施することで、OKRの達成とメンバーのパフォーマンス向上を目指しているフレームワークです。

それぞれのトピックを見ていきましょう。

対話(Conversation)
メンバーが担当するOKRに関し、マネージャーと率直に意見交換を行います。数値的な進捗報告に偏るのではなく、OKR達成を阻む課題や、必要な協力事項について、自由に話し合いましょう。

フィードバック(Feedback)
自分の働きぶりに対する印象を他者から伝えてもらいます。客観的な視点からOKRの実施プロセスを評価し、将来の改善につなげることを目的とします。他者からのフィードバックが効果的になるためには、リアルタイムで具体的なフィードバックであることが不可欠です。「どこが良かったのか」、「どこをどのように改善する必要があるか、その理由はなにか」はっきりと伝えることが重要です。
また、「フィードバック」はマネージャーとメンバー間での双方向のコミュニケーションです。そのため、メンバーもマネージャーに対して、積極的なフィードバックを提供することが求められます。

承認(Recognition)
大小さまさまな貢献に対して、メンバーに対して感謝を伝えます。「承認」はCFRの中でも最も過小評価され、最も理解されていない構成要素です。メンバーに適切に感謝を伝えることは、組織に対する帰属意識を強くし、エンゲージメントを高める効果があります。「承認」は特に形骸化しやすいのですが、OKRシステムではメンバー一人ひとりが個人OKRを定めているので、「承認」する対象が明確になっているため効果的な「承認」の運用が可能となっています。

「対話」はOKRのフェーズによってトピックが異なる

OKRは大きく分けて、「策定と伝達」フェーズ、「追跡と報告」フェーズ、「評価と振り返り」フェーズの3フェーズに分かれます。(OKRのフェーズに関する詳しい説明は、OKRサイクルのスケジュールと工程をご参照ください。)

CFRで対話するトピックはOKRのフェーズによって次のように変化します。

【策定と伝達】目標設定
「策定と伝達」フェーズでは、次のサイクルに向けてメンバーのOKRを一緒に計画します。個人的な目標や主要な結果を、組織の優先項目と一致させるにはどうすれば一番良いかが議論の中心となります。目標設定が双方にとって実現する価値の高いものにするためには、後述する「キャリア開発」についても対話を重ねておくことが重要です。

【追跡と報告】継続的進捗報告
「追跡と報告」フェーズではメンバーが担当するOKRのリアルタイムの達成状況を簡潔かつデータに基づいて確認します。達成状況を簡潔に伝えたうえで、必要があれば課題を提起し、解決に向けた議論や依頼を行います。継続的進捗報告と言っても、メンバーが完了したタスクリストや進捗状況を事細かに報告することをしてはいけません。それは詳細すぎる状況報告はメンバーから自律性とモチベーションを奪い、マネージャーもマイクロマネジメントモードに入ってしまうことで、創造的で本質的な目標達成に向けた議論を阻害してしまうためです。

【評価と振り返り】非公式なパフォーマンス評価
「評価と振り返り」フェーズでは、メンバーのOKRの達成状況を確認し、振り返ります。「非公式」とついているのは、このパフォーマンス評価が昇進・昇給と言った人事評価とは独立して実施するためです。「非公式なパフォーマンス評価」では会社においてメンバーが高いやる気とパフォーマンスを発揮するための議論にフォーカスを当てます。

また、「対話」をより価値の高いものにするためのサブトピックがあります。

【策定と伝達】キャリア開発
「キャリア開発」は「目標設定」のサブトピックです。「キャリア開発」ではメンバーと会社の双方が成長できる機会を発見し、自分の将来像を描けるようにします。OKRはメンバーから主体的に設定することで高いコミットメントとエンゲージメントをもたせることが大切です。そのためにメンバーのキャリアをしっかりと話し合っておくことが大切です。

【評価と振り返り】双方向のコーチング
「双方向コーチング」は「非公式なパフォーマンス評価」のサブトピックです。「双方向コーチング」ではメンバーが潜在力を発揮し、マネジャーが任務をまっとうてできるようにするために、相互理解とふるまいの双方向のフィードバックを実施します。パフォーマンス評価が今後の改善活動に活かされるためには相互の信頼関係が不可欠です。「双方向コーチング」を通じて、強固な信頼関係の構築を目指します。

CFRに基づいた1on1のアジェンダテンプレート

前章で説明したCFRのトピックを使って実際にどのように1on1を実施すればよいのでしょうか?
1on1を実施するときの実際に私が使用しているアジェンダのテンプレートは以下のようなものを使用しています。

実施日 : YYYY-MM-DD
* 対話(Conversation)
    * 達成率%【O1 : コミット】目標1
        * 達成率%【KR1】主要な結果1
            * 達成率の計算に使用する測定値
            * 主要なアクション
        * 達成率%【KR2】主要な結果2
    * 達成率%【O2 : 野心的】目標2
        * 達成率%【KR1】主要な結果1
        * 達成率%【KR2】主要な結果2
* フィードバック(Feedback)
    * OKRの達成を推進するフィードバック
* 承認(Recognition)
    * OKRの達成率向上につながるアクション

対話(Conversation)

OKRと達成率
今四半期にメンバーがオーナーシップを持っているOKRとその達成率を「対話」項の中に記載します。「対話」セクションはこのOKRとその達成率を中心に議論を行います。

達成率の計算に使用する測定値
KR(主要な結果)の達成率の計算式に表れる値をそれぞれ記載します。KRの達成率という客観的な数字に基づいて、マネージャーとメンバーは議論を深めます。KRの達成率は毎週の1on1でトラッキングされます。そのため、[[OKRの実践マニュアル|KRの達成率は明瞭で簡単に計算できる]]必要があります。

主要なアクション
前回の1on1から今回までに実施したアクションの中で特筆すべきものとその結果を簡単にまとめます。CFRに基づいた1on1の目的はOKRの達成に向けた議論と提案です。進捗や作業の報告ではありません。そのため、実施したアクションのすべてを報告する必要はありません。議論や提案に必要なトピックのみ記述しましょう。また、ここでは、実施したアクションや結果といった事実のみを記載して、議論したいことや相談・考察は後述する「フィードバック」にまとめるようにすると、事実と論点がきれいに分離できるのでおすすめしています。

フィードバック(Feedback)

「フィードバック」セクションではOKRに関連して議論したい点や、実施したアクションに対するフィードバックを記述します。フィードバックはマネージャーからメンバーへの一方通行ではなく双方向です。メンバーからマネージャーへのフィードバックも記述しますし、メンバーが自らのアクションに対するフィードバックも積極的に記述するべきです。
フィードバックを記述するときは「具体的であること」と「リアルタイムであること」を意識しましょう。

承認(Recognition)

「承認」セクションではメンバーへの感謝の声を記述します。メンバーが他者から直接「ありがとう」と言われたエピーソードやOKRの達成率向上につながったアクションを記述するのも良いでしょう。マネージャーもメンバーの働きぶりを積極的に他者に確認し、感謝の声を収集することに務めましょう。「承認」のフィードバックと同様に「具体的であること」と「リアルタイムであること」が重要です。そのため、「助かったよ」や「良かったよ」と言われたらもう一歩踏み込んで、「どこが良かったか具体的に教えてもらえますか?」と質問してみましょう。

CFRをより豊かなものにする問いかけ

ここまでCFRの骨子について説明してきました。ここでは、CFRをより豊かなものにしてもらえるように、各トピックでどのような問いかけがなされるか列挙しました。
マネージャーもメンバーも以下のような視点を自問自答しつつ、1on1のコミュニケーションのきっかけとしていただければと思います。

対話

目標設定

  • ooさんが自身の職務のため、チームのため、会社のために最大の価値を生み出すには、どの(全社・部門)OKRにフォーカスすべきだと思いますか?
  • ooさんが挙げた個人OKRのうち、組織の主要な取り組みと方向性が一致しているのはどれでしょうか?

目標設定 > キャリア開発

  • 私が現在の職務でさらに活躍するためにはどんな技能や能力を身につけたら良いでしょうか?
  • 私が未来の職務に向けて、どんな技能や能力を身につけたら良いでしょうか?
  • ooさんのキャリア目標を達成するために、どの分野を伸ばしていきたいですか?
  • 学習、成長、発展という視点で、ooさんがキャリア目標を達成するうえでマネージャーや会社はどんな支援をできるでしょうか?
  • ooさんは何をしているときが楽しいですか?
  • 何をしているとエネルギーを消耗しますか?
  • ooさんの理想の仕事を説明してもらえませんか?

継続的進捗報告

  • ooさんのOKRの達成具合はどうですか?
  • 目標達成を阻害する要因はなにかありますか?
  • OKRの優先事項の変化を受けて、修正、追加、あるいは削除が必要なOKRはありますか?
  • OKRの達成に欠かせない能力はどんなものでしょうか?

非公式なパフォーマンス評価

  • マネージャーが事前に自問すること
  • 今四半期のooさんの最も重要な目標と責任は何だったのか?
  • 今四半期のooさんのパフォーマンスはどうだったか?
  • ooさんのパフォーマンスが期待以下であるなら、どう軌道修正すべきか?
  • ooさんのパフォーマンスが良好あるいは期待以上である場合、どうすれば燃え尽きを防びつつ、高いパフォーマンスを維持させられるだろうか?
  • ooさんはどんなときに最も意欲的に仕事に打ち込めてただろうか?
  • ooさんはどんなときに最も意欲を削がれていただろうか?
  • ooさんの職務における最大の強みは何か?
  • どのような学習機会を与えると、ooさんにとってプラスになるだろうか?
  • これからの半年間で、ooさんは何にフォーカスすべきか。現在の役職の期待水準に達することか。現在の役職で最大限の貢献をすることか。あるいは新たなぷろじぇくと、責任範囲の拡大、新たな役職など次の機会に備えることか?
  • メンバーが事前に自問すること
  • 私は順調に目標を達成したであろうか?
  • 私は新たな成長の機会を見つけただろうか?
  • 私は自分の仕事が会社全体のマイルストーンとどう結びついているかを理解できているか?
  • 私はマネジャーに何をフィードバックするべきだろうか?

非公式なパフォーマンス評価 > 双方向コーチング

  • マネージャーが事前に自問すること
  • 私がooさんに常に期待する行動や価値観とはどのようなものだろうか?
  • 私がooさんに新たに身につけてほしい、あるいはやめてほしい行動や価値観とはどのようなものだろうか?
  • ooさんの能力を最大限引き出すために、私はどんなコーチングをすべきだろうか?
  • メンバーを深く知るための問いかけ
  • 仕事のうち、一番楽しいと感じるのはどの部分ですか?
  • ooさんの職務でどこか変えたいところはありますか?
  • メンバーからフィードバックをもらうための
  • 私はooさんの役に立つことをできていますか?
  • ooさんが能力を発揮するのを、私が妨げている部分はありますか?
  • ooさんがもっと能力を発揮できるように、私に何かできることはありませんか?

フィードバック

  • 実施したアクションの中でOKRの達成に貢献できなかったものはなんですか?
  • このタスクはooさんにとってチームにとって、本当にフォーカスすべきタスクなのでしょうか?
  • ooさんが(チームが)これをやり遂げたら、社内や顧客からすばらしい成功と認められるものでしょうか?
  • 私が(チームが)さらなる高みを目指すために、何かフィードバックをもらえませんか?

承認

  • 実施したアクションの中でOKRの達成に貢献したものはなんですか?
  • (誰かに「良かったよ」と言われたときに)ありがとうございます。良かった点を一つでいいので具体的に挙げてもらえますか?
  • (他者に対して)今週、ooさんに「ありがとう」と伝えたい出来事はなにかありましたか?

1on1を超えたCFR

最後に、実は、CFRはマネージャーとメンバーの1on1に閉じたフレームワークではありません。「対話」はマネージャーとメンバーの間で実施されますが、より成熟した会社では「フィードバック」や「承認」は上下関係、チームにとらわれず、様々な方向から提供されます。
1on1でのCFRが会社に定着したら次の打ち手として、従業員間で自発的に「フィードバック」と「承認」を提供し会える仕組みを考えてみてください。


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